『They Must Be Told!』(a.k.a. SEX Madness、1938年、米) https://archive.org/details/sex_madness_ACM あらすじ  当時の米国で急増していた梅毒の蔓延を防ぐ為の啓蒙映画。田舎娘がニューヨークの芸能プロでパーティコンパニオンの職に就きパーティでレイプされ梅毒になり、偽医者の治療で治ったと信じて故郷で結婚・出産したら子供に障害があり、夫も重病になり無理心中寸前にNYの友人から治療で快方に向かったと電話があって希望を持つ話。政治家の遊び好きの息子がニューヨークのショーガール等と(乱交?)パーティなどしていたら梅毒になり、その経験を演説する話。この2つの話を同時進行させる。 『REEFER MADNESS』(1938年、米) https://archive.org/details/reefer_madness1938 あらすじ  当時の米国で急増していたマリファナの蔓延を防ぐ為の啓蒙映画。ニューヨーク中でマリファナが栽培され広まっている。ギャングはマリファナを餌に学校に麻薬と犯罪を広めようとし、幸せな家庭の学生が知らずに参加したパーティでマリファナを覚える。ハイになった或る学生は車でひき逃げ殺人を起こす。別の学生は意識が混濁している間の喧嘩で暴発した銃が恋人を殺してしまい裁判で死刑になるが、ギャングの摘発で実際にはギャングが銃を握っていたと判明し、殺人については無罪となる。  これらの映画は、現在パブリックドメインに在ります(誰でも自由にダウンロードして見ることが出来ます)。このテキストの最後に、映画で表示される“前書き”を訳して書きました。上のあらすじと合わせて読めば、映画を見なくていいかも(オ!)。 ● そんなに酷い映画かな?  古いし面白いわけでもありませんが、ネット上の批評を読むと、現在の大抵のアメリカ人は、これらの映画を見て“頭から馬鹿にして笑う/頭から否定する”ようです。私が彼らの批判から読み取った理由は4つ、  1.当時の権力側が作った物だから  2.話が古い、穴がある、誇張がある、演技・演出が良くない  3.マリファナも、性病も何てことはない  1と2については、まあそうです(演技・演出は当時の普通レベルだと思うけど)。が、これらの作品は権力側が作っても大衆側にウエイトがあり、単純化・戯画化されていても、ここで描かれた都会の落とし穴/不良化の過程を大雑把に見れば今もそれほど変わらないと思います。  筋を大雑把に見れば  ・若者が都会に行く → 怪しい人に引っかかる → 酷い目にあう  ・学生が悪い友人に誘われる → 悪い事を覚える → 事件を起こし刑務所入り  そして一生を棒に振るわけです。  3について、「マリファナなんて、気分がハイになるだけで依存性も薄いし、アルコール飲料と同じ」とか「ナニしても性病なんかかからねー、かかっても治せる」と皆が考えるようになると、結局、今のアメリカの様に人口の80%以上が麻薬経験者、犯罪の60%は麻薬がらみ、貧しい途上国並みの性病保有率となってしまうのではないでしょうか?  4.移民を排除する目的  途上国からの移民や長期滞在者が、犯罪の他にも麻薬と性病を広めるのは常識で、それを管理出来ない程、移民をどんどん入れてしまっているのが今のアメリカです。「移民によって発展する国」? むしろ今や「移民によって没落する国」みたいに見えます。ですが、アメリカに欧州以外からの移民が激増するのは80年代からですし、これらの映画は別に移民については触れていません。 ● 心に“はどめ”の無い世界  ワレワレ以外の異教徒の道徳とモラルと、異教それ自体の破壊。金こそ正義、金こそモラル、金こそ宗教、金だけが人間を縛る世界、それはワレワレの大目標です。麻薬はOK、武器の所有と使用は良い事、小児性愛もOK、ワレワレ以外のどんな民族も混ぜ混ぜにした猥雑で、宗教やモラルの“歯止め”がない堕落した、ワレワレの支配する家畜世界・・・  実際に麻薬を使う事やレイプや武器の使用は、ネットでフリーの映画やエロサイトを見るのとは話が違います。何をしても自由だと言っても、大前提として人に迷惑をかけてはいけないわけで、国民にそういう心の“歯止め”が無い人が増えると、それにつれて犯罪が増えていったり、それこそ戦争ばかり起こす国になるというか。  映画は好みなのですが、そこまで酷い/間違った事を言ってるとは思えないこれらの啓蒙映画に対して頭から“馬鹿にする”“否定する”批評ばかりのアメリカに於いて、ワレワレの理想郷実現は間近のようです。でもソドムとゴモラは破滅しましたネ。 参考: 少し新しい、同タイプの映画(フリーになっていない??) 『High School Confidential!』(1958年、米) あらすじ  当時、すでに高校に蔓延していたマリファナの脅威を啓蒙する映画。  この映画は、ちょい役で出ているテキサス・ジョー・フォスターという人が、潜入捜査官として転校し、100名近い逮捕者を上げた際の実話をドラマチックに脚色したものです。『REEFER MADNESS』から20年後、映画も進歩しましたが、米国学生の麻薬汚染も、ますます悪化していたようです。 ● 余談  上記の他に、これらの映画を天から批判する方々の、私が思いついた理由は三つ。   一、ニューヨークを悪く言っているから   二、麻薬や性風俗で儲けている連中自身の当然の反発と妨害   三、マリファナ解禁派の組織票  一について、ニューヨークの暗い部分を指摘する作品にはナゼか批判するメディアが多く、ネット上には実際以上に低評価を付ける人が居ます(彼らはホントに素人か(^^;)?)。三について、ユダヤ系を中心にマリファナを(完全に)解禁しろと各州で運動している人達が居るようです。依存性があるタバコと強いアルコール飲料を足した様な効果のマリファナが完全解禁されると、新たに莫大な金を生む産業が生まれるという江戸の悪徳商人みたいな考えです。この人達は大衆操作に長けているというかマスメディア関係 ≒ プロ市民が多いので・・・ ● 序文の訳 『They Must Be Told!』(1938年、米)の序文の訳  前書き  時代を通して最も悪い犯罪者より一層危険な脅威が急襲しています。梅毒。この怪物を取り押さえて、そして永久にその恐ろしい影響を踏み消しましょう。結婚の妨げ・・・家族の崩壊・・・そして罪無き子の生まれながらの盲目−病んだ−そして障害の有る・・・不幸な生活を運命付けられた。梅毒の被験者はもう沈黙していてはなりません、他のあらゆる危険な伝染病と同じように、外に向かって戦わなくては成りません、人類は啓蒙されなければなりません! 老いも若きも・・・富める者も貧しき者も・・・  彼らは話さなければ成りません! 『REEFER MADNESS』(1938、米)の序文の訳  前書き:  貴方が見ようとしている映画は貴方を驚かせるかもしれません。さもなければ、アメリカの青年を破滅させる新しい麻薬の犠牲者が危険なほど増加していることを十分に強調する事は出来なかったでしょう。  その麻薬マリファナ − 激しい麻酔剤 − 語りつくせない災い − は、本当の最も恐ろしい公共の敵です!  その最初の効果は突然の制御できない暴力的な笑いです、そして危険な幻覚が来ます − 時間がスローダウンして、ほとんど止まります・・・次に、怪物の様に途方もない考えを想起させて、固定観念が来ます − 情緒障害、完全な思考停止、感情に抵抗する全ての能力の喪失が続きます・・・最終的に強烈な暴力を導きます・・・終いにはしばしば不治の精神病になります。  その気が滅入る効果を描写する為には曖昧な表現を使うことが出来ませんでした。この話の脚色された場面や出来事は、実際のマリファナ中毒の調査研究に基づいています。  もしこれらの厳しい現実が貴方を考えさせ、この恐ろしい脅威を消し去る為に何かしなければならないと認識させたなら、この映画はその目的に於いて失敗しませんでした・・・なぜなら、恐怖のマリファナは次に貴方の息子や娘に・・・貴方達に手を伸ばしているかもしれませんから・・・貴方達に!